無限圏の高次の射1

最近、無限圏の勉強を再開しています。一昨日から今日まで、無限圏の高次の射について考えていたのでメモとして書いてみようと思います。

 \require{AMSmath}  X を無限圏とします。  f, g X の 1-射とすると、その間の 2-射  f \to g としては、いわゆる左ホモトピーと右ホモトピーが考えられます。

  • ホモトピー \alpha \in X_2 で、 \alpha|_{\Delta^{\{0,1\}}} = \mathrm{id},\ \alpha|_{\Delta^{\{1,2\}}} = g,\ \alpha|_{\Delta^{\{0,2\}}} = f なるものが  f から  g への左ホモトピーです。これは 1-射の domain を退化させて(ダブらせて)、退化させた方向を射の向きとしている、といえます。1-射  f に対して  f|_{\Delta^{\{0\}}} を退化させているので、これを (2,0)-射と呼ぶことにします。
  • ホモトピー \alpha \in X_2 で、 \alpha|_{\Delta^{\{0,1\}}} = f,\ \alpha|_{\Delta^{\{1,2\}}} = \mathrm{id},\ \alpha|_{\Delta^{\{0,2\}}} = g なるものが  f から  g への右ホモトピーです。これは 1-射の codomain を退化させて、退化させた方向を射の向きとしている、といえます。1-射  f に対して  f|_{\Delta^{\{1\}}} を退化させているので、これを (2,1)-射と呼ぶことにします。
合成

2 つの (2,0)-射  \alpha : f \to g,\ \beta : g \to h があるとき、  \alpha \beta の合成が、射  \require{AMSmath} \Lambda _ 1^ 3 \xrightarrow{(\beta,\ -,\ \alpha,\ \mathrm{id})} X の拡張によって与えられます。また、  \alpha \beta がそれぞれ (2,1)-射の場合、合成は射  \require{AMSmath} \Lambda _ 2^ 3 \xrightarrow{(\mathrm{id},\ \beta,\ -,\ \alpha)} X の拡張によって与えられます。

(2,0)-射と (2,1)-射同士は合成できるでしょうか?絵を描いてみると、次のような結果が得られます:

  • (2,0)-射  \alpha : f \to g と (2,1)-射  \beta : g \to h の合成(?)は、射  \Lambda _ 2^ 3 \xrightarrow{(\beta,\ s _ 1 f,\ -,\ \alpha)} X の拡張によって与えられ、これは (2,0)-射となります。
  • (2,1)-射  \alpha : f \to g と (2,0)-射  \beta : g \to h の合成を考えてみます。対象  d _ 0 g には 3 本の射  g,\ \mathrm{id},\ h が向かっているので、  d _ 0 g は 3-単体の頂点  \Delta^{\{3\}} に対応します。よって、 3-単体の面  \Delta^{\{0,1,2\}} \alpha に、面  \Delta^{\{0,2,3\}} \beta に対応しなければなりません。しかし、この状態の単体からは、  f h をともに含む面が得られないため、  \alpha \beta の合成はできないことになります。
逆射

(2,0)-射  \alpha : f \to g を考えます。このとき、射  \Lambda _ 2^ 3 \xrightarrow{(\alpha,\ s _ 0 g,\ -, \mathrm{id})} X の拡張  \sigma が存在し、  \beta = d _ 2(\sigma) とおけば、  \sigma は 2-ホモトピー  \alpha \circ \beta \simeq \mathrm{id} _ g を与えていると考えられます。では、 2-ホモトピー  \beta \circ \alpha \simeq \mathrm{id} _ f は存在するでしょうか。

まず、3-単体を得たいため、 4-horn の拡張を用いればよいのでは、という考えが浮かびます。4-horn を作るためには 4 つの 3-単体(で面、辺、点が互いに整合的なもの)を準備すればよいです。ただ、絵を描いて考えてみると、3-単体を得るために outer horn の拡張が必要になったり、horn ではなく  \partial \Delta^ 3 \to X の形の射しか得られなかったりして、どうしても射  \Lambda _ i^ 4 \to X が作れなさそうです…。上の  \beta \alpha の左逆射ですが、新たに 3-horn の拡張で  \alpha の右逆射を得ようとしても、そのために outer horn  \Lambda _ 0^ 3 の拡張が必要になるので、できないように思えます(Groth の "A Short Course on ∞-categories" の Remark 1.16. (iii) には、右逆射についても左逆射と同じことが言えると書いてある気がするのですが…)。

3 次以上

色々文献を見ましたが、2-射の間の 3-射やそれ以上をどのように定義すればいいのかよくわかりませんでした。May の "Simplicial Objects in Algebraic Topology" の §3 で n-単体の間のホモトピーが定義されているので、それを高次の射として採用できるのでしょうか…。この定義では 1-射の間の 2-射は上でいう (2,1)-射となり、2-射の間の 3-射は「(2,1)-射の間の、いくつか候補が考えられるうちの 1 つの射」ということになりますが、それ以外の場合((2,0)-射の間の 3-射はどうなるのか、3-射として別の定義を採用したらどうなるのか)について考えるのは(実際どうかはまだわかりませんが)大変そうです。勉強を進めつつ、気が向いたらまた考えてみようと思います。